フォト・プレミオ2009 中嶋太一写真展-龍の流れし夜-コニカミノルタプラザ ギャラリーA
主人公となるのは、モノレール、 千葉市を走る千葉モノレールです。
この千葉モノレールというのは 『懸垂型モノレールとして営業距離世界最長』とギネスに載っているとのことで、 つまり都市交通の要、市民の足として、 千葉都心部と周辺の住宅地を結んでいる路線ということになります。
作者はモノレールそのものに注目しているのではなく、 実際モノレールの車体は今回の作品のどこにも写っていません。
そのレールが都市の中を縫っていくさま、 蛇腹のような鋼鉄の筐体の連続が都市を切り裂いていくところに、 非日常的なものを感じて、 龍が流れていくさまに例えたというわけです。
すべてスロー・シャッターで撮られた夜景の写真です。 レールの下を通り過ぎる車両は露光時間の間に通りすぎてしまい、 一本の光の帯に省略されてしまっています。
印象的な写真があります。 深夜の住宅地の写真です。 きちんと区画整理された住宅地の交差点から、 遠く交差点まで見通すことができます。 人通りのない深夜、交差点の信号だけは赤く、 その周囲を染めています。 赤く染めようとしていのは何なのか? 交差点の向こう側にはモノレールの蛇腹がその住宅地を横切っています。 住宅街の風景としては確かに異様です。
わたしにとってモノレールとは、 上野動物園であったり、 向ヶ丘遊園だったり、 よみうりランドであったり、 羽田空港であったり、 大阪万博であったり、 今で言えばディズニー・ランドということになるのでしょうか。
空中を走り抜けることの疾走感、 レール一本の上に乗っている(あるいは支えられている)不安定な感じ、 それはそのまま、これから遊園地や動物園、さらに言えば未来に向かっていくという高揚感に連なっていくのです。
つまりモノレールとは日常の場所からハレの場所へわたしたちを導いてくれる 何かわくわくさせる交通機関であったのです。
ただ同時にわたしはそれが容易に崩れ去っていくことも知っています。 たとえば向ヶ丘遊園のモノレールが廃線となり、 レールが撤去されずに朽ちていくままに放置されていた光景も見ています。
本作品展の作者である中嶋氏は1978年生まれ。 彼より世代が上のわたしはモノレールに対する印象も異なっているかもしれません。 市民の足として現役バリバリで役立っていたとしても、 「朽ちてしまった未来」の残骸としか見えなくなっている私と、 作者のイメージとは通底するものがあると思います。
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