ダニエル・マチャド写真展-幽閉する男-銀座ニコンサロン
ウルグアイ生まれの写真家の個展です。
モデルとなったのはホセというウルグアイ在住の男。エリートを輩出した名家の出ですが、その家も没落し、唯一残った独身のホセが独りで住んでいます。
そのホセという男もかつてはエリート官僚だったのこと。その家は独り身の寂しさにに満ちているというわけではなく、かと言って掃除が行き届いているとも決して言えないのですが、その家に飾られている写真や、置物を見ると昔の栄光、昔のノスタルジーに耽っているかのようです。南米特有といっていい、くすんだパステル調の家の色彩が影響しているかもしれません。
彼の趣味なのか、あるいは彼が最後に看取ったという叔母の形見なのか、部屋にはセルロイドか陶製の人形が飾られていたりして、ホセ自身、エリート官僚の面影はほとんどなく、引きこもりのまま年を重ねてきたようにみえます。
ずんぐりむっくりとした体躯の男は今の暮らしに満足しているのか? そんなことがとても気になります。そうではないということは確かですが、彼の表情からは何を感じているかは読み取れません。
ではなんでそんな男、ホセを被写体として選んだのでしょうか。 二十世紀半ば南米のスイスと謳われたウルグアイのその後の国家そのものの没落の象徴としての彼なのでしょうか。
壁は剥げ落ち、ソファのマットは朽ちていますが、叔母のものと思われるワンピースや鏡台はそのまま残されています。家の中を見ると荒廃の一歩手前で踏みとどまっているようです。古き良き昔の思い出などというのは所詮人の胸にしか残らないもので伝えようもありません。それらは腐るのではなく、朽ちるまま、過ぎ行く時間を静かに見送りながら、精一杯の矜持を保っている男の肖像と解するべきでしょうか。
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