津乗健太写真展-楽しくなさそうにはしていない猫-船橋競馬場の猫たち-コニカミノルタプラザギャラリーA
作者は現在船橋競馬場の厩舎員として働いているとのことです。写真家志望の若い男性がどんな経緯で厩舎に勤めるようになったのかは不明です。ただ今回と同名の写真展を過去同じギャラリーで開いているそうで、最初は汚くて臭くて嫌だと思っていた厩舎暮らしが、今ではそれなりに愛着が湧いて来たということが挨拶文に書かれています。
厩舎という閉ざされた不思議な世界の風景が最初に興味を引きます。厩舎と聞いて、閉鎖的で旧態然としていて、仕事だって恐らく単調な肉体労働の連続で、よっぽどの馬好きでなければ勤まらないだろうなということが、私の中のイメージとして浮かんできます。
そんなイメージを半ば裏切らないような風景が広がっています。ちょっと前に流行った昭和レトロの世界に近いのかも知れません。厩舎員の宿舎なのでしょうか、トタン屋根の二階建ての家は普通に民家のようにしか見えず、二階のベランダには洗濯物が干してあったりします。ただ生活感が漂う普通の家と違うのは、その家の壁に区画を示す英数字が大書してあること、そして家の目の前の道が、アスファルトの道ではなく、未舗装のダートであるということです。
そこにいる猫は飼い猫なのか、馬の餌のおこぼれを求めて集まってくる野良猫なのかは分かりません。人に懐いているのかそうでないのか、厩舎の人間も猫たちをかわいがっているのか、それとも害悪を厩舎に与えることがないということで放置しているのかがわかりません。その猫と人間のないようであるような距離感が、妙な懐かしさを呼び起こします。
そして猫の後ろ姿を写す作者の視点は、まさに猫の視点はと言っていいでしょう。厩舎という社会に自らの存在をそれなりに認められてはいるだろうけれど、それでもまだ部外者としての違和感は拭いきれない、そんな立場の作者の視線と重なります。そしてその視点は少しずつ写真家の視点に近づいている、という作者自身の手応えが伝わってきます。「楽しくなさそうにはしていない」というのはまさしく作者自身です。
個人的な嗜好を言わせて貰うと、私は猫とか犬とかを被写体とした写真展というのは苦手です。ですからギャラリーのある高野ビルの入り口で写真展の題名を見た時、正直あまり食指が動きませんでした。ただ私が想像していたような「猫可愛がり」の写真ではないことは確かです。
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