金瀬胖写真展-千葉 銀色の街-コニカミノルタプラザ ギャラリーA
ここ数年の千葉の風景を銀塩フィルムを使ったモノクロの写真です。千葉と言っても作者が住む習志野から船橋、富津あたり、撮影されたのは古くて2000年、多くは去年、一昨年あたりに撮られています。
この写真の舞台となるJR津田沼駅あたり、ユザワヤのビルの裏側にある畑の風景は私にもなじみがあるものです。
作品を一通り見て浮かび上がってくる感想は、日本の街並みというのは、この数年で酷く傷ついてしまったのだなぁ ということです。
その思いを強く持った写真があります。たぶん私鉄沿線の駅、急行が停まるかどうかの駅の風景です。それほど広くはないロータリー乗用車が一台を除いてはがらんとしていて、アスファルトのひび割れが痛々しく広がっています。ロータリーの真ん中にはクリスマスツリーがあり、夜になればそれなりに綺麗に輝くのでしょうが、昼間ではわびしげです。駅前広場を囲む建物も古びて見え、「エイブル」という不動産屋の看板でかろうじてこれが2000年代の写真であることが察せられ、それがなければ80年代と言われても分からないでしょう。
言い悪いとして別にしても、おそらくこの十数年で都会の風景は劇的に様変わりしているはずと思いこんでいたのです。ところがこの一枚の写真はある意味驚きでした。
非効率的、老朽化あるいは単に古くさいとか、どんな理由はわかりませんが、その時代で否定された風景を塗り固めていたものが、この数年でほろりとはげ落ちて昔の姿が露呈してきている、そんな印象です。
この作品の舞台となった一帯は短期間で二種類の荒波を受けています。一つはバブル期を挟んで断続的に続く開発による破壊、二つ目はバブル崩壊や昨今の不況による衰退。おそらく時間をおかないで破壊と衰退の過程を繰り返した街は、ノスタルジーなど抱きようのない痛ましさだけが残されています。
作者の言葉を引用すれば、「消滅の際にあるものが酸化した銀色の結晶のように見える」とのことです。これは即ち銀塩写真のことです。うっすらと皮膜し、堆積していく見えない錆のようなものを、乳剤に潜ませた銀粒子一つ一つに呼応させ、X線写真のようにその街の痛みを結像させていく、この作者にとって作品とはその過程に他なりません。
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