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2009年7月19日 (日)

王子直紀写真展-牛島-新宿ニコンサロン

鹿児島県鹿児島郡十島村悪石島。本作品展の「牛島」とはこの島と考えて間違いなさそうです。屋久島と奄美大島の間にあるトカラ列島に浮かぶ南国の小さな島で、ポゼ祭りという奇祭が有名で、7月22日、皆既日食の観測に絶好の地であり、テレビクルーを始め島は今まで訪れたことのない人数を迎えるために準備が大変とのことです。

ギャラリーには作品に関する紹介文や作者の略歴が何もないので、写真に写ったものから探さなければなりません。ただ作品の中に「悪石島小・中学校」の校門の写真があるので、そこを探すのは難しいことではありません(ちなみにこの悪石島小中学校のブログが充実していて、日食観測前の様子が描かれています)

写真は全てモノクロです。辺境の島を訪れて、普通に感じるだろう南国の自然の美しさ、豊かさ、そこに住む人達の素朴で人懐こい笑顔、なんてものには明らかに背を向けているです。磯にはいかにも悪石島の由来かと思わせる軽石のようにボツボツ穴のあいた石が転がり、亜熱帯の植物が村を浸食するように迫っているように見える景色です。少なくとも当地の観光協会から推薦が得られるような写真ではありません(もっともそんな写真展であれば私自身あまり食指が動きませんが)。

そこにあるのはどちらかというと濃密な人々の生活の匂いです。重機を動かし、家を建て、裏山の崖の補修をし、墓を掃除する、そんな人々の暮らしです。そんな村の風景で黒牛がいます。そのなんとなく不機嫌そうな佇まいが目を引きます。

作者の視点がなんとなく奇妙です。窮屈という訳ではなく、なんとなく限定されているような、作者自身どのような方法論で作品に接しようとしているのかちょっとわかりません。島の風景をある程度距離を置いてスナップしているわけでもないし、村人の中に入り込んだルポルタージュ的な視点でもない、ちょうどその中間という感じです。それが中途半端とは言いませんが、その立ち位置にある種のもどかしさを感じてしまうというのが私の率直な感想です。

結局ニコンサロンのサイトにある紹介文を参考にせざるを得ませんでした。作者はどちらかというと都市の写真を得意としていること、そして八十ミリという”中途半端な”レンズ一本を持ち込んで島に乗り込んだということ。村の人達の仕事を手伝ったりしながら写真を撮りためたということ。そして乗り込んだ島も悪石島ではなく同じトカラ列島の平島であること。そんなことが書いてあります。

つまりこの作家の立ち位置という問題だと思います。都会という存在はある意味無防備で、レンズさえ向ければ被写体は向こう側から飛び込んでくるのでしょう。都会では充分と言える八十ミリレンズも辺境の島では息苦しさすら感じてしまう画角の狭さとなります。しかしながら時代を写すために共通の視点も必要であることも事実であり、都会を写す方法論として確立したその手法がどこまで通用するのか、その実験のための苦闘の記録と言えるでしょう。

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