刑部信人-comic FOTO PREMIO-コニカミノルトプラザ ギャラリーA
写真について文章で説明するには、時として虚しい気になることがありますが、今回の作品展の写真は意味があるかも知れません。(ただし私の拙い文章力で、作者の意図が伝えられるかというとこれは問題かも知れませんが)
渋谷駅ガード下の写真があります。一台のパトカーが停まっています。両側のドアが開け放たれており、そこに数人の警官が殺到しています。何かがあったに違いないのですが、それは分かりません。そしてそこに集まった警官たちのすべて決定的に肝心なことを見逃しているように思えます。パトカーの前方道路脇は生垣になっており、木の脇から白い布で頬冠りした男が様子をうかがっていて、明らかにこの男が怪しい感じです。
次に競馬場での写真です。そこは芝生の広場が広がっており、うらららかな日思い思いに日向ぼっこをしているようです。写真が捕らえたのは芝生に寝転んだ一人の男。一瞬びっくりさせられるのはその男の首がないということです。でもよく見るとその男は首を両肩の間に埋めるようにして居眠りしているだけです。だがその姿はうなだれているようにも見え、場所が場所だけに競馬で大損しているのではないかと考えたりします。ただ男の前には新聞が広げられているのですが、それは普通の新聞であり、ギャンブルに来たわけもなく、ただ日向ぼっこに来たついでに居眠りしてしまっただけのようです。
とあるテーマパークの写真も笑わせます。時代劇をテーマにしているのでしょうか、観客もまばらで休憩所にいる客も多分この程度だろうと、どこかつまらなそうにしています。だが彼らが全く気が付いていないところ、つまり彼らの頭上には二本のロープが張られていて、そこを忍者姿をした男がロープを渡っています。
つまりこの作者は明確です。その写真の構図の中、切り取られた一瞬、ただレンズを向けたその構図だけで浮かび上がる笑いです。実を言うとこのような光景は日常にたくさん潜んでいるかもしれないのですが、そのほとんどは気がつきませんし、気が付いても忘れてしまうものでしょう。一瞬を捕らえるということで、成立する世界というのは極めて写真的であり、一つの威力と言えるでしょう。
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