勝田尚哉写真展-築く-コニカミノルタギャラリーC
都会は無数のパブリック・スペースが存在していますが、少なくとも同数のプライベート・スペースが存在することになります。そしてパブリック・スペースとプライベート・スペースの面積を比べるとしたらプライベート・スペースが圧倒的に多いと思われます。都会の中を自由に行き来できるようで、実際に立ち入りができる所など数パーセントもないでしょう。
立ち入りが禁止される理由は様々あります。単純に公人・私人を問わずプライベート・スペースだからという理由もあるだろうし、保安上の問題というのもあるでしょう。
そして普段一般の人が立ち入れないという、それだけの理由で、もの珍しさ、好奇心以上に特別な意味を持ってきます。
立入のできるエリアは実は限られているという意味では、東京も伊勢神宮もまったく同じ構造を持っていると言えるかもしれません。
今回の写真展は普通ならば一般の人が立ち入りが拒否される空間の一つ、工事現場を撮った作品展です。
薄暗い半地下の空間の中で、作業用の電灯が篝火のように、錆びた鉄骨と剥き出しの地盤が照らされるその場所は、胎内に潜り込んだと錯覚させる、エロチシズムすらただよう神々しさが漂っています。
この空間は誰に支配されているのか? ここは厳密に構造計算された力学的な空間であり、この建造物が建設することにより享受できる高度な経済的な空間です。つまり科学的合理性という名のもとに君臨している、技術と経済というふたつの現代の「神」がそこに降り立つ祝祭の場です。
作者は深く現場に入り込んで撮影しています。どのような関係でこのような場所を撮影できたのか、そんな疑問がありましたが、それもそのはず、作者は長く建築会社に勤務されていて、担当となった広報の仕事で建築写真を始めたとのことです。
完成してしまえば類型的としか思えない建築物にしかならないかもしれません。それでもパネルに囲われ、人の目から隔絶された更地の中で、杭が打たれ、梁が掛けられた瞬間、そこが聖なる場所、現代の禁足地となり得るということを明らかにしたという意味でも、極めて美しい写真です。
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